文様

 

鵜は古代から日本人と深く関わってきた鳥。

7世紀の書物に鵜飼の記述がみられる。

日本書紀には豊玉姫の出産のおり、産屋の屋根を鵜の羽で葺いたと記載。

水鳥であることから鵜だけでなく、波や州浜などと組み合わせたものや、千鳥と一緒に描かれた作品もある。

春の早い時期に囀るため、「春告げ鳥」などと呼ばれ親しまれてきた。

「梅に鶯」は春の文様の代表的な取り合わせとされ、柄鏡や蒔絵用具などに広く描かれた。

文様に見られる鶯は、春の訪れを心待ちにする日本人の思いが軽やかに描かれているものが多い。

江戸時代には愛玩用として、そして鳴き声を楽しむために飼われ、もてはやされた。

「鶉文」は中国では唐の時代から絵画、工芸の題材とされてきた。

日本では「粟穂に鶉」の取り合わせは多くの文様に取り入れられた。

土佐光起は「鶉文」の大家といわれ、多くの作品に鶉が使われる。

現在も残る鶉文様の香炉などには、つがいで描かれるものが多い。

その愛らしく仲睦まじい姿が心温まる文様として人気がある。

鸚鵡

日本書紀にもみられる。

古くから文様として用いられ、正倉院の宝物のなかにも見られる。

着物に「鸚鵡の袖」が見られる。

異国情緒を感じさせる。

鴛鴦

鴛鴦の睦まじい様子は絵画や詩歌の題材となっており、正倉院には「赤地鴛鴦唐草文」などが保存されている。

「鴛鴦文」は夫婦の睦まじさを表すおめでたい文様とされ、礼装、盛装用の着物や帯に用いたり、花嫁のお色直しに使われる。

鴛鴦の文様の蒲団を被ると良縁に恵まれるとされる。

ものの哀れをさそう鳥。

空を高く飛ぶ雁をかたどった「遠雁」などがある。

秋を感じさせる季節の鳥として雁の文様は人気が高く、衣装や陶磁器ばかりでなく、武具や調度品などにも用いられている。

川蝉

文様は広く知られており、華やかな色彩を感じさせるものも多い。

雉は古代から神聖な鳥とされ、白い雉が見つかると年号が変わるほどであった。

雄の赤い顔が絵全体のアクセントになるため、文様として使われることが多い鳥の一つ。

陶器や漆器などに傑作が多く、野々村仁清の「色絵雉子香炉」や江戸時代の「雉蒔絵印籠」が有名。

孔雀

中国などの文様を受けて広く知れ渡った。

孔雀の文様は正倉院にもある。

「孔雀文」は江戸時代にはより写実風になり、婚礼用に多く用いられ、打掛、小袖などに描かれる。

雄の羽の一本を文様化したものを「孔雀羽文」という。

日光東照宮に見られる孔雀彫刻も華麗である。

神聖な鳥として儀式に用いられた。

「雄鳥文」と呼ばれる、雄鳥の立派な姿を描いたものが多い。

伊藤若冲は鶏の絵の名手として知られる。

神聖な鳥とされ、「鷺舞」といった神事が残っている。

蒔絵、狩衣、金蘭などの名作も多い。

重文に指定されている「染付鷺文三足付皿」は涼しげで繊細な絵柄。

代表的な絵柄には「竹に雀」があり、「稲穂に雀」は秋の風物詩。

二羽の雀が羽を伸ばした文様を「雀形」といい、屏風の裏に多く描かれたところから、屏風を雀形ともいう。

「脹雀」の文様は子供の衣装や玩具に多く用いられている。

平安時代の国宝「桜菊双雀鏡」

強さの象徴。

音が「武」「猛」「高」に通じ、武家に重く用いられた。

鷹を描いた文様は多く、「鷹像幡」として御即位式や元旦節句の際に用いられもした。

千鳥

「千鳥文」は多くの蒔絵や染物に用いられ、高野山金剛峯寺に残る平安時代の写実的な文様から、つながって見える「千鳥繋ぎ文」や、「波に千鳥文」などがある。

千鳥の足指は三本だが、一本は短いため文様では二本に描かれることが多い。

かき氷ののれんなど、身近なものにも用いられている。

鳥の中で一番多い文様。

高貴な鳥とされ、平安時代には鏡などに用いられた。

慶祝事をはじめ、蒔絵、陶磁器、着物などに用いられている。

秋の雁と対照的に扱われ、春の代表的な渡り鳥。

雨の中を飛び回る「雨に燕」や、柳の枝と戯れる「柳に燕」、蝶と組み合わせた「蝶燕文」の文様が多い。

紅型や絵絣に多い。

梟を文様にしたものには鎌倉時代の螺鈿の鞍がある。

春日大社には短刀の柄に梟を使用したものが伝わっている。

鳳凰

鳳凰の伝承は飛鳥時代。

奈良時代には装飾品など多種多様に用いられた。

想像上の鳥であるから、より自由に表現された作品が多い。