似勢物語
 
みやこどり
 
昔、ある男が琉球に渡った。
琉球の美しい鳥をたくさん捕らえ、男が店を開く住田で鳥を売る魂胆である。
 
首尾は上々。
とりわけ、宮古島で捕らえたミヤコショウビンはことのほか美しい。
嘴と脚が赤く、翼は瑠璃色。
これなら必ずや高く売れるであろう。
 
しかしどうしたことであろう、あれほど色彩豊かだったミヤコショウビン、
羽の色がすっかり白くなってしまった。
長い船旅で心労が重なったのだろうか。
 
住田に戻った男はさっそく鳥を販売するも、ミヤコショウビンの
売れ行きは芳しくない。
餌代もばかにならない。
しかたがないので、ミヤコショウビンを篭から解き放した。
 
自由な身となったミヤコショウビンは墨田川に定着する。
宮古の鳥なので、『宮古鳥』と呼ばれ親しまれる存在になった。
 
あるとき、都から貴族がやって来て、渡し舟に乗り込んだ。
鳥の名を聞かれたたので、渡守が『宮古鳥』と答えたものの、
『都鳥』と勘違いしたらしく、なにやら変な歌を詠んでいる。
 
その後、墨田川のミヤコショウビンは数を減らし、とうとう絶滅。
地元でもその存在は忘れ去られてしまった。
宮古島のミヤコショウビンも、大量に捕獲された影響で絶滅への道を
歩むことになってしまいましたとさ。