仏法僧


(835) 性霊集
「閑林独坐草堂暁 三宝之声一聞 一鳥有声人有心 声心雲水倶了了」
(静かな林で暁に三宝の声を一鳥に聞くとき、その鳥の声は人の心に響き、空をゆく
雲も川を流れる水も、すっきりと明了である)

この詩により仏法僧と鳴く鳥の存在が広く知られ、「仏法僧鳥」「三宝鳥」と呼ばれる。
918 躬恒集
凡河内躬恒が左大臣の家を訪ねたさい、仏法僧と鳴く声御聞いたので、
「足曳の山に住むらんこの鳥は 妙にやは鳴く ・・・山に住み希に聞こゆる鳥なれど 
・・・いかでか鳥のかねて知りけん」と詠むと、左大臣が「法を思う心深く入りぬれば 
さくとも鳥に耳ぞありけん」と詠んだ。
1249 辯内侍日記(二月五日)
「佛法僧となくとり・・・すがたはひえどりのやうにて、いますこしおほきなり」
(ヒヨドリに似て、少し大きい)
二月五日にはブッポウソウもコノハズクもいない
1672 通念集
「雄『佛法』と鳴けば、雌『僧』と声をあわすなり」
1681 狩野常信 鳥写生図巻
(仏法僧の絵はブッポウソウ)
1772 嗚呼矣草
「究て梟の類に決すべし」
1794 禽譜
(仏法僧の絵はブッポウソウ)
1809 紀伊国名所図会
「雌は雄と同じ形にして全身淡黒に白毛雑はり、深黒の斑あり。喉及び腹白に黒斑あり。
嘴淡緑にして脚は淡褐なり。」
 1777
〜1887
倭訓栞
「大きさはひえどりより小なり。背は萌黄なり。羽先黒を交え、嘴赤く太く、足も明かし。
爪前に二つ後ろに二つありて夜陰に雄『佛法』と鳴き、雌『僧』と鳴くなり」
ブッポウソウ、コノハズクなど混乱。人から聞いた情報が混ざる?
1833 茅窓漫録
「形鳩に似て目大に青色嘴赤黄を帯び目の左右の隈赤く足淡赤にて爪黒く頭頬より喉
に至りて黒く右の赤色を以て頭頬の間を分かつ。喉下及び 羽の端皆群青なり。頭より
背及び胸腹皆黒漆にして緑色を帯び、羽尾共に黒し。」
1925 民俗学者早川孝太郎 雑誌「民俗」
「仏法僧は鳳来寺山に棲むと云うて、雄はブッポウと鳴き、雌がそれに合わせてソウと
後をつけるなどといった」と言い伝えを紹介。
1935 6月7日 ラジオで仏法僧の声を放送
そのラジオ放送を聞いた飼い鳥が、仏法僧と鳴いた。
その飼い鳥を鳥類学者の黒田長禮が借り受ける。
6月12日 飼い鳥が仏法僧と鳴き、仏法僧と鳴くのはコノハズクと判明。
6月12日 山梨県河口村の中村幸雄氏、仏法僧と鳴く鳥を撃ち落し、コノハズクと判明。


ブッポウソウ コノハズク
季節 夏鳥 夏鳥
食性 昆虫 昆虫
営巣 樹洞 樹洞
環境 神社など 神社など
垂直分布 低〜中 中〜高
昼の声 ゲッ
夜の声 ブッポウソウ
姿 美しい
霊鳥にふさわしい
美しくない


毎年夏、神社に美しい鳥が来て、その頃から夜になると仏法僧と声が聞こえるので、
同じ鳥と思い込んだ。
鳴き声から霊鳥とされ、それにふさわしい姿の鳥をブッポウソウとした。
鳥によっては地鳴きと囀りがあり、ブッポウソウが昼にゲッと鳴いても、
夜には仏法僧と鳴くと思い込んでいた。
ブッポウソウを飼う人がいて、仏法僧と鳴かなくても、ブッポウソウは雌雄同色、
雌なのかなと思い込む。
コノハズクを飼っていて、声を聴いた人も、仏法僧とは聞こえなかった。
仏法僧という字はもっと低音のイメージ。


表紙
鳥へぇ