キツツキ
木登り |
体を股関節まわりに回転させ、体を樹幹に近づけてから蹴り出しを行う |
指 |
第二指、第三指が前、 第一指、第四指が後ろ。 第二〜四指を主に使う。 第一指はほとんど使わないので、ミユビゲラのように退化してしまった種もある。 第四指は後ろにも横にも向けられる外対趾足で、 木に登る際に側方運動を助け、垂直に止まれる。 両脚と硬い尾羽の三点で体を支える。 |
尾羽 |
尾羽は硬い。 特に太くて硬いのは中央の四枚。 両端の二枚は柔らかい。 中央の羽が上で外側の羽は下になるが、最外尾羽は5番目の上。 |
穴 |
複数 |
ねぐら |
蛇などの外敵が侵入してきたら、別の穴から逃げる |
一つ |
巣 |
穴が少ない方が侵入される危険性は低い。 卵やヒナは逃げられないので、一箇所を集中的に守る。 |
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ねぐら用は細い木でもOK。 掘り方が雑。 外縁部まで腐朽していてもOK。 |
巣 |
子育て用の巣は毎年新しく作る。 (クマゲラは古巣を利用することもある) |
ノグチゲラは傾きが65〜75度の樹の下側に巣を作る。 平坦な森林では営巣せず、40度ほどの急な山腹で営巣。 |
キツツキの巣穴 |
3.5cm |
コゲラ |
枯れ木 |
3.7cm |
コアカゲラ |
枯れ木 |
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4.4cm |
アカゲラ |
生木(内部は腐朽) 高さ5〜6m 複数の木に小さな穴(試掘穴)を開け、一つを巣穴にする。 |
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5cm |
ミユビゲラ |
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アオゲラ |
生木(内部は腐朽)桜が多い 桜類幹心腐病の桜は心材が腐朽する。 丈夫な割りに掘りやすい。 |
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5.5cm |
オオアカゲラ ヤマゲラ |
主に生木 高さ13m |
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6.5cm |
ノグチゲラ |
心材腐朽した生木や枯死木。 高さ3〜9m |
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12cm |
クマゲラ キタタキ |
生木 真っ直ぐな高木 5年以上使用する |
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生木 |
掘るのは大変だが、丈夫で壊れにくい |
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枯れ木 |
掘るのは簡単だが、壊れやすい |
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外側(辺材部) |
丈夫なほうが巣が壊れにくい。 外敵により巣が破壊される危険が少ない。 |
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内側(心材部) |
柔らかいほうが巣穴を掘りやすい。 |
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外側(辺材部)と内側(心材部)の硬さの差が大きい木を選ぶ。 |
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内側(心材部)が硬いと、穴の深さが浅い傾向がある。 |
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細い木より太い木を好む |
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前面が開けた場所に巣を作る。 |
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餌を採るための穴は輪郭がハッキリせず、ギザギザ。 |
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ねぐら用の穴は巣穴と違い、細い木にも造る。 ねぐら用の穴は雑な造り。 |
アカゲラの巣 |
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入り口 |
縦直径 |
44mm |
横直径 |
43mm |
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奥行き |
55mm |
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深さ |
266mm |
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造巣日数 |
2〜3週間 |
クマゲラの巣 |
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通直性(真っ直ぐに伸びた木) 樹齢250年のブナなどの高木 樹皮にコケが少なく、蔦のからまっていないほぼ平滑なもの。 平均樹高27m、胸高直径67cm、地上9m、 穴の大きさ たて15cm、よこ10cm 谷側に向く(雨の浸入を防ぐ) 地上から巣穴まで枝が一本もない 地上から最初の巣作りはほとんど♂、仕上げは♀、一ヶ月以上。 掘る木片の量は30リットル。 枝の高さ(下枝高)12m 使用中の巣穴入り口は爪で削られ、白茶色をしている。 |
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採餌 |
老木、枯れ木 |
ねぐら |
生木、空洞化した半枯れ木 |
営巣 |
巨大生木 |
雛や卵の天敵 アオダイショウ、テン |
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クマゲラの巣を利用するのはムササビ、モモンガ、ニホンヤマコウモリ、 オシドリ、ゴジュウカラ、ブッポウソウ、ハリオアマツバメ、 オオスズメバチ、ニホンミツバチ、アカヤマアリ |
抱卵 |
雌雄で抱卵。 夜は♂が抱卵。♀は夜、自分のねぐらで過ごす。 |
打診 |
木をつついて音の変化で空洞を探し当てる。 |
キツツキは脳震盪を起こさないのか |
たたいた反動は、嘴から、蝶番の骨(と筋肉)、頭蓋、頚椎と伝わって、体へと抜ける。 衝撃を体全体に分散するような頭部の構造になっている。 |
@ 嘴は真っ直ぐで、基部が太い |
A 頭骨は厚く、隙間が少ない |
B 骨を支える筋肉が発達 |
ドラミング |
♂♀共に行うが♂のほうが多い。 秒速6.1m(時速24km)ほど。 一突き1,000分の1秒 |
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コゲラ |
一秒間に25回 1スパンが0.3秒で、8〜9打 1打目が最も強く、だんだん弱くなる。 |
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アカゲラ |
18〜22回 0.6秒で13打 平均間隔0.05秒 |
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オオアカゲラ |
16回 1.8秒で29打 平均間隔0.06秒 |
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アオゲラ |
19回 |
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クマゲラ |
18回 一日に8,000〜12,000回 |
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アリスイ |
抱卵交代など、繁殖期にドラミングを行うことがある 1.3秒に23回 |
縄張宣言 |
コゲラ |
キッキッ |
アオゲラ |
ピョー |
嘴 |
人の爪のように少しずつ伸びるので、磨り減って短くならない。 嘴の付け根に生えている毛は、木屑が目や鼻に入るのを防ぐ。 |
舌 |
嘴の先から10cmほど伸びる。 舌はそれほど長くない。 舌につながる舌骨と舌筋が長い。 舌がカギ状で、穴の中の虫を引っ張り出す。 蟻を食べる種が多いが、粘り気の強いアルカリ性の唾液で蟻酸を中和する。 |
クマゲラ属 舌+舌骨=20cm 舌は嘴の先端から顎部分で二手の舌骨に分かれ、後頭部を通り、 それぞれが左右眼球の内側から左右の鼻孔に達している。 |
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アカゲラ属、アオゲラ属 舌骨が顎から頭蓋をぐるりとまわって、右の鼻孔を通り、 付け根が上嘴まで達している。 呼吸は左側の鼻腔だけで行う。 |
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舌骨の周囲に付いている頤舌骨筋を収縮し、舌を前に押し出す。 他にスズメ目のコクモカリドリ、ハチドリも同じような構造を持つ。 |
雌雄 |
多くが雄のほうが大きいが、小型種(コゲラ、コアカゲラ)は雌がやや大。 |
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アカゲラ |
アオゲラ |
分布 |
落葉広葉樹 |
常緑広葉樹 |
アオゲラ |
晴れた日にねぐら穴に戻るのは、日没10分後 |
下嘴腺は膠着性の物質を分泌し、餌を舌に粘着させる作用がある。 |
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特にアリを好む。 |
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アオゲラ属は熱帯を中心に栄えているグループ。 |
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ヨーロッパアオゲラに近縁 ヨーロッパアオゲラは一日で2,000匹のアリを食べた記録あり。 |
アカゲラ |
分布域が広く、欧州などでは他のキツツキが生息しない分断化された林にも生息し、カラ類やモモンガなどの樹洞提供者となっている。 |
造巣は二週間 |
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ドラミングの長さはオスのほうが長い。 |
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オスの方が、造巣、抱卵、抱雛に熱心。 |
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縄張り争いは、二羽が向かい合ってお尻の赤い羽を膨らませ、首を蛇のように振って脅し合う。 |
アリスイ |
キツツキの原始的な鳥。 他のキツツキと同様、対趾足。 尾羽は普通のキツツキと違い、硬くない。 一般の鳥のように横枝に止まる。 キツツキは留鳥が多いがアリスイは渡り鳥。 |
一つの巣を観察したところ、親の運んだ餌の90%がアリの繭 |
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体長比では世界最長の舌。 |
オオアカゲラ |
繁殖開始が早い。 カミキリムシ幼虫を食べることが多い。 時期が遅くなると幼虫が蛹になったり、羽化してしまう。 アカゲラの数十倍のなわばり。1.5km四方に一つがい。 アカゲラより巣穴が高い位置にある。 西日本に多い。 西日本では古い木の電柱に穴を開けることが多く、ブッポウソウの巣穴として重要。 |
クマゲラ |
繁殖年齢に達するのは、メスで1〜2年、オスは2〜3年。 寿命は10年 瞳は前方を見ている場合には紡錘状に変化する。 |
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舌 |
舌+舌骨の長さは20cm 大型のアリ(ムネアカオオアリ)を主に食べる。(一日千匹) アリが分泌する蟻酸に対応し、ステンソン氏腺と呼ばれるアルカリ液を分泌。 コリアミルチンという猛毒が含有されたドクウツギの果実を食べても平気。 |
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餌 |
ムネアカオオアリ、トビイロケアリが多い。 |
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尾羽 |
12枚 外側の2枚は柔らかく、他は硬い。 中央4枚は特に硬い。 両脇尾羽の重なりは普通の鳥と逆。 |
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分布 |
過去には東北六県、新潟県にも記録あり。 現在は北海道、青森県南部、岩手県北部、秋田県北部に生息。 |
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亜種 |
日本と同じ亜種は欧州から極東まで広く分布。 (中国西部を除く) |
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北海道産と本州産のものでは亜種レベル程度の差異が検出されつつある。 |
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巣 |
営巣木は穴までに枝が一本も生えていない高木。 (下枝高が12m以上) 樹皮にコケの付着が少ない木を選ぶ。 蔦が絡まっていない木。 排出される木片は30リットル。 巣穴は雨の侵入を防ぐため谷川に作られる。 クマゲラだけは毎年同じ巣を利用。 |
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繁殖 |
雌雄で抱卵するが、夜は♂のみ。 メスは自分のねぐらで過ごす。 卵の重さ11.25g つがい関係は終生だが、非繁殖期は単独生活。 オス、メスそれぞれ複数のねぐらを持つ。 |
コゲラ |
北方の個体ほど大きい。 北方の個体ほど淡色。 |
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雄の後頭部にある赤い羽は長さ7.5mm |
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声 |
ギィー |
個体間の確認 |
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キッキ |
自己主張 |
ノグチゲラ |
他のキツツキと違い土を掘って餌を採ることもある(世界唯一)。 (土堀行動) ♂に多い。 ヤンバルクイナがいることでもわかるように、猛獣が生息していない。 そのため、地上で安心して採餌できる。 マングースによる被害が増えている。 |
巣穴を掘るのは主に♂。 |
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産卵数は2〜6(平均4卵) 巣立つのは2羽 (アカゲラでは4〜6卵の産卵で5羽巣立つ) |
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抱卵は、夜は♂。 |
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オスの雛への給餌は地中に棲む節足動物が主。 |
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お オスの頭は赤いが、雛は雌雄共赤い。 |
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死ぬまでペアを変えない。 |
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DNAの分析ではアカゲラ属のオオアカゲラに近縁 オオアカゲラの亜種だったが、独自の変化を遂げた。 |
ヤマゲラ |
日本では北海道だけで見られるので、北方系のイメージだが、 台湾など、南にも生息。 日光でも記録があるという。 |
オオアカゲラより少し大きいが、嘴が華奢で舌は長め。 木に穴を開けて虫を食べることは少なく、木の割れ目に舌を差し入れてアリなどをたべる。 |
生息する島 |
コゲラ |
小さな島や大きな島にもいるが、 小さな島や本土から離れた島には少ない。 |
アオゲラ |
本土から近い島 |
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ヤマゲラ |
北海道本土から離れた島では繁殖しない。 |
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オオアカゲラ |
本土から離れた大きな島 |
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アカゲラ |
本州や北海道と北海道本土を離れたいくつかの島 |
島で見られない組み合わせ |
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アカゲラとオオアカゲラ |
アカゲラは北方で個体数が多く、島は北海道 オオアカゲラは南方で個体数が多く、島は本州以南 |
アオゲラとオオアカゲラ |
アオゲラは本土から離れた島にはいない。 オオアカゲラは離れた島に多い。 |
ヤマゲラとアオゲラ |
どちらも長距離の移動はしない。 |
周年生息するキツツキ類 |
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面積 |
ク |
ノ |
ヤ |
青 |
オ |
赤 |
小赤 |
コ |
ミ |
サハリン |
76,400 |
ク |
|
ヤ |
|
オ |
赤 |
小赤 |
コ |
ミ |
北海道 |
78,073 |
ク |
|
ヤ |
|
オ |
赤 |
小赤 |
コ |
ミ |
本州 |
227,414 |
ク |
|
|
青 |
オ |
赤 |
|
コ |
|
四国 |
18,256 |
|
|
|
青 |
オ |
|
|
コ |
|
九州 |
36,554 |
|
|
|
青 |
オ |
|
|
コ |
|
台湾 |
35,980 |
|
|
ヤ |
|
オ |
|
|
(コ) |
|
利尻島 |
182 |
|
|
|
|
|
赤 |
|
コ |
|
佐渡 |
855 |
|
|
|
|
オ |
|
|
|
|
三宅島 |
55 |
|
|
|
|
|
|
|
コ |
|
淡路島 |
592 |
|
|
|
青 |
|
|
|
コ |
|
小豆島 |
58 |
|
|
|
青 |
|
|
|
コ |
|
隠岐 |
242 |
|
|
|
|
オ |
|
|
コ |
|
対馬 |
696 |
|
|
|
|
|
|
|
コ |
|
屋久島 |
505 |
|
|
|
青 |
|
|
|
コ |
|
種子島 |
446 |
|
|
|
青 |
|
|
|
|
|
奄美大島 |
712 |
|
|
|
|
オ |
|
|
コ |
|
沖縄本島 |
1,204 |
|
ノ |
|
|
|
|
|
コ |
|
キツツキ類が生息していない島 礼文島、八丈島、小笠原、西表島
コゲラは三宅島や御蔵島にはいるのに、手前の大島にはなぜかいない。
キツツキの生息種類数は、島の面積の増加に伴い増えていく |
|
十平方キロ以下の島 |
0 がほとんど |
百平方キロ以下の島 |
1 がほとんど |
千平方キロ以下の島 |
2 がほとんど |
千平方キロ以上の島 |
3 以上が多い |
小笠原諸島は本土から千キロも離れているので、キツツキは生息していない。 |
|
標高1,700mを超える山を持つ利尻、屋久島は二種だが、 近くでほぼ同大の標高500m以下の礼文、種子島は0か1 |
クマゲラ |
小さな島には生息しない |
ミユビゲラ コアカゲラ |
サハリンと北海道だけ |
キタタキ ノグチゲラ セグロコゲラ |
対馬だけ 沖縄本島だけ 台湾だけ |
ヤマゲラ |
サハリンと北海道、台湾 |
|
嘴 |
||
基部の横幅(mm) |
縦幅(mm) |
長さ(mm) |
|
オオアカゲラ |
19 |
14 |
59 |
クマゲラ |
14 |
11 |
39 |