狂歌 

 

同一の音二音

目ははるか通ふ布留野のほととぎす姿たのしし鳴く雲間待つ

 

ははかかふふののととすすたたししくくまま

詠百首狂歌

こしじより来るとはいはじかりたかに鳴くなる声はふとふととして

「こしじ」は「越路」「小指似」に掛ける。

@空高く太い声で鳴くのを聞くと、あの雁は越路から来たとはいえない。

A雁高で太々としたものを小指似とはいえない。

堀川狂歌集

ほととぎす鳴きつるかたをながむればただあきれたる面ぞ残れる

天明狂歌

ほととぎす昼ともいはず夜なきするみどりこやまのかしましき声

なの字十

やよ水鶏来てなな鳴きそ鳴くなべに戸やなるならんと夜な夜な起きぬ

雁のたより

「ふ・ミ」の字で雁の群れ飛ぶところを描いた文字絵

ふじの嶺のふもとはふみのふの字にてミほはミの字とミゆる雁がね

狂歌才蔵集

 

ふる小袖ときほととぎす洗濯のたらひのたがもかけたかと鳴く

小袖を「ときほどく」と「ほととぎす」を掛ける。

「欠けたか」と鳴き声の「かけたか」を掛ける。

臍穴主

ゆきかへり友呼びかはしなき上戸顔もあかしの浦千鳥足

「ゆきかへり友呼びかはしなき」は千鳥の生態。

「明石の浦の友千鳥」と掛ける。

狂歌若葉集

屁をひれば音も高野の山彦に仏法僧とひびく古寺

腹唐秋人

一つらに雁は野陣をはりまがたしかのかちを告げにきたより

「播磨潟」と「張り」をかける。「褐」と「勝ち」を掛ける。

「来た」に「北」を掛ける。

加保茶元成

はるばると道を雉子の声聞けば我も留守する妻ぞ恋しき

「春」を掛ける。「雉」と「来」を掛ける。

一声の初音も高きほとゝぎす是ぞてつぺんかけねなしなる

「てっぺんかけたか」に「天辺(最高)」と「掛け値」を掛ける。

年ごとに来てはかせいで帰れるは越路にたんとかり金やある

「雁金」に「借金」を掛ける。

紀定丸

待ちわぶる人を思ひてだまされし水鶏をわれはたゝきたきかな

鶯もはるの日の長じゆずにほうほけ経をくり返し鳴く

「張る」と「春」を掛ける。

つむり

ほとゝぎす自由自在にきく里は酒屋へ三里豆腐やへ二里

一日に八千八声うけあうて山ほとゝぎすあはねとぞなく

鹿都部真顔

雨雲のはるかうへのの時鳥かさの下寺さして聞ゆる

「雨雲の上」と「傘の下」 「上野」「下寺」を掛ける。

宿屋飯盛

蛤にはしをしつかとはさまれて鴫たちかぬる秋の夕ぐれ

蚌の争いは漁夫の利

西行法師の和歌から

馬場金埒

ほとゝぎすなくねもちやうど八せんのはじめ終りの空にふるほど

ホトトギスは八千八声鳴くといわれる。

「八専」は陰暦壬子の日から癸亥の日まで

智恵内子

郭公ひるともいはず夜なきするみどりこやまのかしましき声

「嬰児(みどりご)」に「緑小山」を掛ける。

手柄岡持

しら雪はきゑさうなるが鶯の聲をはるべにならふ法花經

「消えそう」「帰依僧」、「張る」「春」

鏡汁のつまともなさめ山鳥のおろぬきそむるけふの若菜は

「山鳥の尾ろの鏡」は、山鳥の雄の尾に光沢があって雌の影をうつすというので、鏡に見立てる。

浜辺黒人

天津空琴柱にたてる初雁を十三峠に見るはめづらし

ほとゝぎす富士と筑波の天秤に両国ばしをかけたかとなく

両国橋は下総と武蔵の境。

富士山と筑波山ろ両天秤にかけたのかと鳴く。

声の「てっぺんかけたか」に「橋を架けた」と掛けた。

元木網

谷の戸を引きあけ方の鶯はまだ一声のあともしまらず

鶯の常套後「谷の戸」

「声が締まらない」と「戸締り」に掛ける。

四方赤良

郭公なきつるあとにあきれたる後徳大寺の在明のかほ

百人一首 後徳大寺左大臣藤原実定の和歌から

ほとゝぎすなくやひとふたみつまたときくたびごとにめづらしき庵

「三股」「一」「二」「三」と数字を連ねる。

かりがねをかへしもあへず桜がり汐干がりとてかりつくしけり

雁が帰るか帰らぬかにすぐに桜狩り、潮干狩りと続く。やっと借金を返済したかと思うとまた次々へと借りるだけ借り尽くすという生活そのままだ。

「雁がね」に「借金」を掛ける。「帰し」「返し」を掛ける。

ひとつ取りふたつ取りては焼いて食ふ鶉なくなる深草の里

藤原俊成「・・・鶉鳴くなり深草の里」

みほとけに産湯かけたか郭公(ほととぎす)天井天下たったひと声

ホトトギスの声を「産湯かけたか」とききなす。

唐衣橘洲

ほとゝぎす須磨の浦ではなけれどもなれをまつ風村雨の空

「待つ」「松」を掛ける。

いづれまけいづれかつをと郭公ともにはつねの高うきこゆる

「勝つ」「鰹」を掛ける。「初音」「初値」を掛ける。

蜀山百首

千早振神も御存ない道をいつのまにかはよく教え鳥

慈悲心も佛法僧も一聲のほうほけきやうにしくものぞなき

堀河百首題狂歌集

まぶたさへあはで幾夜か暁の鴫のかんきんして果さまし

蜀山人(四方赤良)

あし引の山鳥のおのしたりがほ人丸ばかり歌よみでなし

淡路島かよふ千鳥のなくこゑに又ね酒のむすまの関もり

田中正造

さとりけれバ今はた同じ人も鳥りも皆身のほどのほとゝぎすかな

元日や鶴のあたまは真赤なり わがひげしりしみよのはつはる

喜多川歌麿

鳥の名のうき名かこたん川波に はつとはなしのたねとなりなば

のきちかくほゞうとつくる一声ハ 我恋中をミたかうぐひす

うずらふのまだらとくどけども 栗の初穂のおちかぬる君

うそとよぶ鳥さへよるハぬるものを とまり木のなき君のそらごと

ゑなが

人の手にかハれよとてちぎらじな たとへゑながのゑにつきるとも

かし鳥

かし鳥のつたなき声がくどけども なけども君の耳にとめむハ

つけ文のつかいものにハ地をはしる 恋のやつこもかものとりもち

翡翠

君とわがのちのゆかけて蓮の葉に いひかハせみのはねをならべん

こまどり

こまどりの名のミこまなる思いかな 恋の重荷をやるせなき身

あふてのちうき名をふるゞからすより たゞ口さきのへらそぎぞうき

四十雀

四十からと君に見えてやいたゞきの 色にはちよとつらき御返事

鴟鶉(しじゅん)

ふくろうのめハもちながらいかなれば よるハくれどもひるミえぬ君

さだめなき君が心のむら雀 つゐにうき名のはつとたつらん

鶺鴒

あたふ夜にむねのおとりハなほりても いまに人目のせきれいハうし

鷹ならばうき名の外にはつとたつ 小鳥ものをのがゑにしなるべき

かけ香の丁子の口ハとづれども まかせぬけさの鶏の舌

鳩の杖つくまで色ハかハらじな たがいに年のまめハくふども

雲雀

大空におもいあがれるひばりさへ ゆふべハ落ちるならひこそあれ

頬白

色ふくむ君がゑくぼのほう白に さしよる恋のとりもちもかな

木兎

鳥とともになきつわらひつくどく身を それぞときかぬ君かみゝづく

めじろ

口舌しておしだされしミつぶとん つらきめじろの鳥ハものかハ

百舌

ひからびし思いハ百舌の草くきの つつかけものになるぞくやしき

山雀

君ハ床をもむけのくるみまわればかり ちからおとしの恋の山がら

山鳥

山鳥のほろほろなみだせきわびぬ いく夜かゞみのかげもミせぬば

 

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