奥の細道

 

45日 栃木県雲巌寺

 木啄も 庵はやぶらず 夏木立

寺を突いて壊してしまうという啄木鳥も、尊い聖が住んだ庵ばかりは破らない。

この夏木立が幽明の澄んだ世界をつくっているこのようである。

419日 栃木県那須町温泉神社

 野を横に 馬牽むけよ ほととぎす

那須の広大な野を行く馬の首を、横に引き向けよ。

そこにホトトギスが鋭い声で鳴いて

59日 松島

 松島や 鶴に身を借れ ほととぎす (曾良)

松島の絶景の中でホトトギスがしきりに鳴いている。この美しい景色の中では、ホトトギスの姿ではふさわしくない。鶴に姿を借りて来い。

616日 新潟県象潟

 汐越(しおこし)や 鶴はぎぬれて 海涼し

汐越の浜に波が打ち寄せ、そこで鶴があさりをしている。

鶴の長い脛が波で濡れて、海はなんとも涼しそうであることよ。

 波越えぬ 契りありてや 雎鳩(みさご)の巣 (曾良)

ミサゴは夫婦仲の良い鳥とされているが、波が越えてこない約束を波とでもしているのか、あのように危うい岩の上に巣をつくっている。

「奥の細道」旅の期間中の句

42日 栃木県日光

 ほととぎす 裏見の滝の 裏表

47日 栃木県黒羽

 田や麦や 中にも夏の ほととぎす

411日 栃木県黒羽

 鶴鳴くや その声に芭蕉 破れぬべし

416日 栃木県那須町

 落ち来るや 高久の宿の 郭公

421日 栃木県須賀川

 関守の 宿を水鶏に 問はうもの

 

 

 芭蕉の句

 

笈の小文

雲雀より 空にやすらふ 峠哉

須磨のあまの 矢先に鳴くか 郭公

鷹一つ 見付てうれし いらご崎

ほとゝぎす 消行方や 嶋一つ

星崎の 闇を見よとや 啼千鳥

続山井

岩躑躅 染むる涙や ほととぎ朱

しばし間も 待つやほととぎす 千年

冬扇一路

雲とへだつ 友かや雁の 生き別れ

六百番俳諧発句合

待たぬのに 菜売りに来たか 時鳥

俳諧江戸十歌仙

塩にしても いざ言伝てん 都鳥

俳諧おくれ双六

郭公 招くか麦の むら尾花

俳諧東日記

五月雨に 鶴の足 短くなれり

鶴来酒

鶯や 餅に糞する 椽の先

笈日記

五月雨に 鳰の浮巣を 見に行む

刈り跡や 早稲かたがたの 鴫の声

この宿は 水鶏も知らぬ 扉かな

榎の実 散る椋の羽音や 朝嵐

水鶏啼くと 人のいへばや 佐屋泊り

盃に 泥な落しそ 群燕

嵯峨日記

うき我を さびしがらせよ かんこどり

一日一日 麦あからみて 啼く雲雀

能なしの 眠たし我を ぎやうぎやうし

ほとゝぎす 大竹藪を 漏る月夜

藤の実

郭公(ほととぎす) 声横たふや 水の上

続深川集

我がためか 鶴食み残す 芹の飯

猿蓑

病雁の 夜さむに落て 旅ね哉

雲雀鳴く 中の拍子や 雉子の声

鶯の 笠落したる 椿かな

桐の木に 鶉鳴くなる 塀の内

闇の夜や 巣をまどはして 鳴く鵆

続猿蓑

稲妻や 闇の方行く 五位の声

鶯や 柳のうしろ 藪の前

鶏頭や 雁の来る時 なほあかし

けごろもに つつみて温し 鴨の足

野ざらし紀行

草まくら 犬もしぐるゝか 夜の声

冬牡丹 千鳥よ雪の 時鳥

海くれて 鴨の声 ほのかに白し

花摘

何に此 師走の市に ゆくからす

蛇食ふと 聞けばおそろし 雉子の声

泊船集

菜畠に 花見顔なる 雀哉

俳諧一橋

花咲きて 七日鶴見る 麓哉

色杉原

かくれけり 師走の海の かいつぶり

虚栗

鶯を 魂にねむるか 嬌柳

清く聞かん 耳に香焼いて 郭公

時鳥 正月は梅の 花咲けり

五十四郡

戸の口に 宿札名乗れ ほととぎす

続の原

花に遊ぶ 虻な喰ひそ 友雀

続虚栗

永き日も 囀りたらぬ 雲雀かな

鸛の巣も 見らるる花の 葉越し哉

原中や 物にもつかず 鳴く雲雀

焦尾琴

鸛の巣に 嵐の外の 桜哉

俳諧漆島

鳩の声 身に入みわたる 岩戸哉

阿羅野

父母の しきりに恋し 雉子の声

おもしろうて やがて悲しき 鵜舟かな

炭俵

木がくれて 茶摘も聞くや ほとゝぎす

鶯や 竹の子藪に 老を鳴く

鹿島紀行

ほととぎす 今は俳諧師 なき世かな

刈りかけし 田づらの鶴や 里の秋

千鳥掛

よき家や 雀よろこぶ 背戸の粟

西華集

雁さわぐ 鳥羽の田づらや 寒の雨

真蹟短冊

時鳥 鰹を染めに けりけらし

ほととぎす 鳴くや五尺の 菖草

真蹟懐紙

いらご崎 似るものもなし 鷹の声

鷹の目も 今や暮れぬと 鳴く鶉

鵲尾冠

夢よりも 現の鷹ぞ 頼もしき

真蹟自画賛

枯枝に 烏のとまりたるや 秋の暮

白馬集

四方より 花吹き入れて 鳰の波

伝真蹟画讃

曙は まだ紫に ほととぎす

卯辰集         

橘や いつの野中の 郭公

己が光

京にても 京なつかしや ほととぎす

怒誰宛書簡

雁聞きに 京の秋に 赴かん

伊賀産湯         

千鳥立ち 更け行く初夜の 日枝颪

俳諧鷹獅子集

ひごろ憎き 烏も雪の 朝哉

俳諧翁艸

比良三上 雪さしわたせ 鷺の橋

親戚懐紙

稲雀 茶の木畠や 逃げ処

陸奥鵆

杜鵑 鳴く音や古き 硯箱

俳諧深川

節季候を 雀の笑ふ 出立かな

芭蕉句選拾遺

鶴の毛の 黒き衣や 花の雲

俳諧別座敷

木隠れて 茶摘みも聞くや ほととぎす

韻塞

雀子と 声鳴きかはす 鼠の巣

烏賊売りの 声まぎらはし 杜宇

住吉物語

世に匂へ 梅花一枝の みそさざい

あつめ句

水寒く 寝入りかねたる 鴎かな

ほととぎす 鳴く鳴く飛ぶぞ 忙はし

 

一疋のはね馬もなし河千鳥

 

かんこ鳥われも淋しいか飛んで行

 

草の葉を落るより飛ぶ鶯かな

 

塒せよわらほす宿の友すゞめ

 

一聲は江に横たふやほとゝきす

 

松光る山に興ありかんこ鳥

 

名月や鶴脛高き遠干潟

 

 

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