一茶
おらが春 |
獨坐 |
松島の 小隅は暮て 鳴く雲雀 |
今の世も 鳥はほけ經 鳴にけり |
鶯の 馳走に掃し かきねかな |
雀の子 そこのけそこのけ 御馬が通る |
横乗の 馬のつゞくや 夕雲雀 |
病後 |
竹の子と 品よく遊べ 雀の子 |
谷藤橋 |
這わたる 橋の下より ほとゝぎす |
題童唄 |
ひいき鵜は 又もから身で 浮みけり |
はなれ鵜が 子のなく舟に 戻りけり |
蛙の野邊 |
鶯に まかり出たよ 引蟾 (其角) |
鵜の眞似は 鵜より上手な 子ども哉 |
五月二十八日 |
とくかすめ とくとくかすめ 放ち鳥 |
越後 |
柿崎や しぶしぶ鳴の 閑古鳥 |
其引 |
我と来て 遊べや親の ない雀 (六才 彌太郎) |
はしとり初たる日 |
鵙鳴や 赤子の頬を すふ時に (其角) |
人の親の 鳥追けり 雀の子 (鬼貫) |
子をかくす 藪の廻りや 鳴雲雀 |
娘を葬りける夜 |
夜の鶴 土に蒲団も 着せられず (其角) |
紫の里近きあたり、とある門に炭団程なる黒き巣鳥をとりて、 籠伏せして有けるに、其夜親鳥らしく、夜すがら其家の上に 鳴ける哀さに |
子を思ふ闇やかはゆいかはゆいと聲を鳥の鳴あかすらん |
幽栖 |
我家に 恰好鳥の 鳴にけり |
七月七日墓詣 |
木啄の やめて聞かよ 夕木魚 |
木つゝきが 目利して居る 庵かな |
經堂 |
得手ものゝ 片足立や 小田の雁 |
九月十六日 |
山雀の 輪抜しながら わたりけり |
高井野の高みに上りて |
行な雁 往ばどつも 秋の暮 |
戸迷ひせし折からに |
喧嘩すな あひみたがひの 渡り鳥 |
むら千鳥 そつと申せば ばつと立 |
東に下らんとして中途迄出たるに |
椋鳥と 人に呼るゝ 寒かな |
八番日記 |
鵙の声 かんにん袋 きれたりな |
一月 |
此月に何をいぢむじ鳴千鳥 |
二月 |
水仙の笠をかりてや寝る小雀 |
三月 |
雨だれの有明月やかへる雁 |
行雁や更科見度望みさへ |
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四月 |
夕燕我には翌のあてはなき |
いざこざをじっと見て居乙鳥哉 |
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むつまじや軒の雀もいく世帯 |
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五月 |
武士や鶯に迄つかはるゝ |
春雨や喰れ残りの鴨が鳴 |
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鶯のだまって聞や茶つみ唄 |
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夕雨や寝所焼かれし雉の顔 |
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鳴雲雀水の心もすみきりぬ |
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六月 |
明神の烏も並ぶ田うへ飯 |
七月 |
鹿の子に耳っとしたる雀哉 |
雨はらはら荒鵜の親よ朶に鳴 |
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十月 |
雁鳴や旅はういものういものと |
田の雁の古郷いかに秋の雨 |
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田の雁や里の人数はけふもへる |
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秋寒し鳥も粘つけほゝん哉 |
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椋鳥といふ人さはぐ夜寒哉 |
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淋しさに鵙がそら鳴したりけり |
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十一月 |
ひよ鳥のちよこちよこ見廻ふかけ菜哉 |
霜がれや米くれろとて鳴雀 |
けふからは日本の雁ぞらくに寝よ |
下総の四国廻や閑古鳥 |