種田山頭火

 

家鴨

鳴きかわしては 寄り添う家鴨

ウグイス

草山のしたしさは鶯も啼く

カッコウ

あるけばかっこう いそげばかっこう

すぐそこでしたしや信濃路のかっこう

逢へばしみじみ黙っていてもかっこうよ

雪空ゆるがして鴨らが白みゆく海へ

鴉啼いて わたしも一人

枯木に鴉が、お正月もすみました

鴉とんでゆく水をわたらう

啼いて二三羽 春の鴉で

風の中からかあかあ鴉

鴉啼いたとて誰も来てはくれない

風に吹かれて屋根の鴉は鳴きやまぬかな

お正月の鴉かあかあ

烏けふも啼きさわぎ雲のみだれけり

啼いて鴉の、飛んで鴉の、おちつくところがない

啄木鳥

ひとりきいてゐてきつつき

スズメ

すずめをどるやたんぽぽちるや

ツバメ

燕とびかふ旅から旅へ草鞋を穿く

燕初めて見し夕凪や酒座に侍す

一羽来て 啼かない鳥である

だまつてあそぶ鳥の一羽が花のなか

鳥とほくとほく雲に入るゆくへ見おくる

香春 晴れざまへ 鳥がとぶ

悔いるこころに日が照り小鳥来て啼くか

しんみり雪ふる小鳥の愛情

ひなたは楽しく啼く鳥も啼かぬ鳥も

音は朝から木の実をたべに来た鳥か

椰のみどりの青空のふかさ渡る鳥

闇路戻れば藪しゞま啼ける何鳥か

ふる郷の小鳥啼く一木撫でてみる

大きな鳥の羽ばたきに月は落ちんとす

たふとさは ましろなる鶏

鳩群れて 飛べり果てもなう 照り映ゆる空

ヒバリ

麦が伸びて雲雀が唄ってゐるもう春だ

ヒヨドリ

よい連れがあって雑木もみじやひよ鳥や

鶲また一羽となればしきり啼く

一人で事足る鶲啼く

病めば鶲がそこらまで

フクロウ

ふくろうはふくろうで わたしはわたしでねむれない

かたむいた月のふくろうとして

ブッポウソウ

佛法僧山の仏には山の花

ホトトギス

ほととぎす あすはあの山こえて行かう

水鳥

れいろうとして水鳥はつるむ

おわかれの 水鳥がういたりしづんだり

ミソサザイ        

草の枯るるにみそつちよ来たか

ついそこまでみそつちよがきてゐるくもり

どこかそこらにみそさざいのゐる曇り

ひつそり暮らせばみそさざい

メジロ

梅もどき赤くて機嫌のよい目白頬白

モズ

百舌鳥の さけぶやその葉のちるや

百舌鳥啼いて 身の捨てどころなし

お経あげてお米もらうて百舌鳴いて

暮れても宿がないもずがなく

ちらほら家が見え出して鵙が鋭く

貧乏のどんぞこで百舌鳥がなく

酒樽洗ふ 夕明り鵙が けたゝまし

レール果てなく百舌鳥のみが鋭し

ふと子のことを 百舌鳥が啼く

 

 

木村緑平

山頭火と俳句仲間。三千以上の雀の句を詠む。医師

山頭火を支えた友人

 かくれん坊の 雀の尻が 草から出てゐる

 雀生まれてゐる花の下を掃く

 聴診器 耳からはづし 風の音きいてゐる

 

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