小説

阿倍一族 森鴎外
肥後の初代藩主細川忠利の死去後、多くの家臣が殉死した。
阿部弥一右衛門には殉死の許可が出なかったので、勤めを続けた。
その後、命を惜しんでいるかのような評判を聞き、切腹した。
しかし、遺命に背いたとされ、阿部家は処分を受ける。
藩の処分に不服な阿倍一族は藩と戦い全滅する。

細川忠利は鷹狩を好んだ。
忠利の遺体を荼毘に付す際に、忠利が生前愛育していた二羽の鷹を放したところ、
「有明」と名付けられたは煙の中に飛び込んで焼死。
「明石」と名付けられたは境内の井戸に飛び込み水死。
鷹は雌のオオタカか
雨の日 川端康成
小綬鶏の雛が歩いてる。小綬鶏らしいよ」
あめりか物語 永井荷風
六月の夜の夢 「丁度公園の池に白鳥(スワン)の浮いて居るやう」
田舎教師 田山花袋
あをじつぐみの鳴声が垣に近く聞こえる」
大鴉 エドガー・アラン・ポー(米国)
物語詩
大鴉が突然部屋に入ってきて「Nevermore」としゃべる。
主人公は発狂し「Nevermore」と叫ぶ。

大鴉はワタリガラス
海峡 井上靖
野鳥録音の蒲谷鶴彦がモデル。
津軽海峡の夜空をアカエリヒレアシシギが鳴きながら渡る。
かけす 川端康成
かけすは栗の木に飛び移って、それから低く地上をかすめて飛んだかと思ふと、また枝にもどった。しきりに鳴く」
風立ちぬ 堀辰雄
山麓のサナトリウムで愛する人との生活。
いくぶん死の味のする生の幸福。
閑古鳥の囀りが私たちを眼ざませた。
風の又三郎 宮沢賢治
「たったいままで教室にゐたあの変な子が影もかたちもないのです。みんなもまるでせっかく友達になった子うまが遠くへやられたやう、せっかく捕った山雀に遁げられたやうに思ひました」
かもめのジョナサン リチャード・バック
主人公の鴎、ジョナサンは、他の鴎と違い、飛ぶこと自体に価値を見出す。
著者のリチャード・バックは「飛行機野郎」
バッハの子孫という説も。
森鴎外
高利貸の妾お玉は岡田に恋心を抱く。岡田はドイツ留学が決まる。
行動を決意したお玉だが、偶然の重なりから水泡に帰す。
不忍池で投げた石が偶然に当たり、死んでしまう。

明治十三年 東京上野不忍池 雁はマガンもしくはヒシクイか

山階芳麿呂氏は、明治40年頃、皇居外苑でヒシクイを確認。

昭和14年発行の黒田長禮『雁と鴨』には、「15〜20年前までは東京市上野不忍池及び半蔵門のお濠に冬季より初春まで之を見得たり」

林野庁狩猟統計では、昭和二年東京で141羽の雁が捕獲されている。
菊の雨 内田百
河原鶸「郊外の友人が来て、近所の森の外の道端に落ちてゐたのを御用聞の小僧が拾ったのだと云って、小鳥の雛をくれた。・・・初めは野鵐の子かと思ったけれど、二三日して河原鶸であると云ふ事が解った」
禽獣 川端康成
「そこに十六七並んだ鳥籠のうちから、木兎を選ぶと、書斎へ持って上った。木兎は彼の顔を見ると、円い目を怒らせ、すくめた首をしきりに廻して、嘴を鳴かし、ふうふう吹いた。」
「『キキキキキキキキ』と、百舌はあたりの一切を吹き払ふやうに、高々と答へた」
菊戴は、日雀小雀みそさざい、小瑠璃、柄長などと共に最も小柄な飼い鳥である」
銀の匙 中勘助
「隣の寺の藪へごろすけがきて鳴く」
草枕 夏目漱石
ほーう、ほけきょうと忘れかけたが、いつ勢を盛り返してか、時ならぬ高音を不意に張った。
ほーう、ほけきょーう。ほーー。ほけっーほけっきょうーと、つづけ様に囀づる。
「あれが本当の歌です」と女が余に教へた。
高原 川端康成
「『仏法僧が鳴いてゐます。』と、独言のやうに呟いて、顔を上げた。それで車内はしんと静まった。・・・プッポオン、プップオン・・・と、なにか深い虚空を叩く音のやうに、高い空を渡って来た。」
小春 国木田独歩
「純白(まっしろ)の裏羽を日にかがやかし鋭く羽風を切って飛ぶは角鷹(みさご)なり」
三人妻 尾崎紅葉
山鳥のおろの鏡、のっぺりと生まれたるより当事も無き不了簡を起して、女で食ふ気の男古今其跡を絶たず。」
春琴抄 谷崎潤一郎
主人公「春琴」は薬種商の娘、店の屋号は「鵙屋」。
「春琴」の面倒を見たのは「鴫沢てる」
「春琴」は鶯や雲雀の声を聴くのが好きで、専属の奉公人がいた。
最後に、雲雀を野に放つと、雲雀は戻って来なかった。。
即興詩人 アンデルセン
水の都 「只だ美しきエネチアの(はくてう)の尸(かばね)の如く波の上に浮べるを見るのみ」
焚火 志賀直哉
「先刻から、小鳥島でが鳴いてゐた。『五郎助』と云って、暫く間を惜いて『奉公』と鳴く」
注文の多い料理店 宮沢賢治
「そいぢゃ、これで切りあげよう。なあに戻りに、昨日の宿屋で、山鳥を拾円も買って帰ればいい」
津軽海峡 島崎藤村
「暗碧の色の海、群れて飛ぶ『ごめ』」
鶴は病みき 岡本かの子
「その日の夕刻、熱海梅林のの金網前に葉子は佇って居た。・・・今は素立ちのたった一羽、梅花を渡るうすら冷たい風に色褪せた丹頂の毛をそよがせ蒼冥として昏れる前山の山々を淋しげに見上げて居る」
デミアン ヘッセ
鳥は卵の中から抜け出ようと戦う。卵は世界だ。生まれようと欲するものは、一つの世界を破壊しなければならない。
ハイタカの頭をした猛鳥が地球から抜け出そうとする夢を見る。
鷭狩 泉鏡花
「分かった!そうか。三晩つづけて、俺が鷭撃に行って怪我をした夢を見たか」
冬の日 梶井基次郎
「そして或る日、屏風のやうに立ち並んだ樫の木へ鉛色の椋鳥が何百羽と知れず下りた頃から、段々霜は鋭くなって来た」
不如帰 徳富蘆花
海軍少尉川島武男の出征と、結核に侵された愛妻浪子との悲恋物語。

ホトトギスの口内が赤いことから主人公、浪子は「鳴いて血を吐くホトトギス」に
たとえられている。
眉かくしの霊 泉鏡花
「雪の池の爰へ来て幾羽のの、魚を狩る状を、さながら、炬燵で見るお伽話の絵のやうに思ったのである」
「紺の筒袖に、尻からすぽんと巻いた前垂で、雪の凌ぎに鳥打帽を被ったのは、苟(いやしくも)料理番が水中の鯉を覗くとは見えない。大なが沼の鰌を狙って居る形である」
夏目漱石
「其内薄い霜が降りて、裏の芭蕉を見事に摧いた。朝は崖上の家主の庭の方で、が鋭い声を立てた」
山鴫 芥川龍之介
狩りで鳥を打ち落としたが、見つからず気まずくなったが、木の枝で発見。
山の音 川端康成
「雀の群と思ってゐたなかに、頬白がまじってゐた。・・・頬白は三羽ゐた。頬白の方がおとなしかった。雀のやうにせかせかしなかった。飛び移ることも少なかった」
夢十夜 夏目漱石
「左右は青田である。路は細い。の影が時々闇に差す」
夜明け前 島崎藤村
「宿場でもここは夜鷹が啼く。最早往来の旅人も見えない」
「鳥居峠のは名高い。鶫ばかりでなく、裏山には駒鳥山郭公の声が聴かれる。仏法僧も来て鳴く」
「あれは嘉永二年にあたる。山里では小鳥のおびただしく捕れた年で、殊に大平村の方では毎日三千羽づつものアトリが驚くほど鳥網にかかると言はれ」
よだかの星 宮沢賢治
美しい「はちすずめ」や「かわせみ」の兄だが、醜い容姿のため鳥の仲間から嫌われ、
」からも「たか」の名前を使うなと怒られる。居場所を失い夜空を飛び続けた「よだか」は、青白く燃え上がる「よだかの星」となって今でも夜空に輝いている。

ヨタカがハチドリ、カワセミの兄となっている。
ヨタカはヨタカ目、ハチドリはアマツバメ目、カワセミはブッポウソウ目。
以前の分類では近かったが、最近の分類でブッポウソウ目は遠くなった。
1920年発行の「東京帝室博物館天産部・列品案内目録」の鳥類分類表で、ヨタカ、ハチドリ、カワセミはブッポウソウ目となっていた。
宮沢賢治は1921年に上京し度々東京に出かけていた。
1921年頃に執筆されたとされる。
羅生門 芥川龍之介
「その代り又が何処からか、たくさん集まって来た。・・・は、勿論、門の上にある死人の肉を、啄みに来たのである。」


  戯曲
父帰る  菊池寛
「おたあさん今日浄願寺の椋の木で百舌が啼いとりましたよ、もう秋ぢや。」


表紙
鳥へぇ