刷り込み

 

刷り込み

imprinting

子供が、生まれた直後の短期間に得た刺激を元に、

親やつがい相手の類型を認識し、その認識が一生固定されるしくみ。

孵化後数時間〜数日。

自分のそばで動く、自分より大きなもの。

視覚聴覚が重要。

鳥と哺乳類(有蹄類)で確認されている。

鳥では早成性の種で多く知られる。

(晩成性の鳥では育てられた親に似た繁殖相手を選ぶ傾向がある。)

同種としての属性を備えている刺激ほどより強固に刷り込まれる。

本能行動を単純に変化させたもの。

本能の域を出たばかりの単純な学習。

哺乳類では視覚と臭覚が重要。

追随反応

親として認識し、追随する。

報酬(餌、手入れ、温かさ)により、強化される。

孵化後すぐ親子で移動

カモ目、シギチ、ツル、クイナ

大コロニーで生活

ウミネコ、ペンギン

性的刷り込み

成鳥になってからも成立する現象。

個体に刷り込みされるわけではなく、その種に固有の特徴を認識する。

性的二型が顕著な種では、雌雄いずれかのみの刷り込み対象となることもある。

(カモなど雌だけが子育てする鳥では雌のヒナは影響を受けない)

親を覚えるだけでなく、自分が属する種も覚える。

人が育てると人に求愛する。

産卵数の少ない種

ツルなど

兄弟を見て種を覚える

人に求愛する心配はない

(♂が一羽だけだとダメ)

産卵数の多い種

ガンカモ類など

さえずり

鳴禽類では生後初期の敏感期にさえずりを記憶する。

止まり木

ケージ内で異なる樹種の止まり木で育てると、

広いケージで繁殖しても、

各々が育った止まり木と同じ種類の木の枝で営巣した。

巣材

アカマツの巣材の巣で育った個体は、アカマツを好んで巣材とする。

別種のガンに育てられたガンのヒナは、同種のヒナが多いと兄弟関係によって、

種を正しく認識するようになり、正常に繁殖するようになる。

カッコウ類の雛は、刷り込みによって仮親を認識。

 

非可逆性

いったん刷り込まれると、他の刺激は刷り込まれにくくなる。

 

感受期

(臨界期)

刷り込みの習性獲得は生後一定期間内でしか起こらない。

この期間を感受期と呼ぶ。

鳥の神経、筋肉協応が、対象物に追随できるよう充分に発達した直後に始まる。

鶏ではピークが15時間後で、2日まで。

マガモでは孵化後15時間に頂点がある。

独りで残されるという不安から生じる。

20時間すると恐れの本能が出て刷り込みは起こらない。

ガンでは36時間以内。

 

ハイイロガンの臨界期は生後一日で、それ以降は刷り込みは行われない。

カモでは1315時間

 

性的刷り込みが完璧だと、オスは顔見知りのメスとつがいになってしまう。

オスにとって顔見知りのメスは兄弟か自分の母親だが、それでは近親婚となってしまう。

近親婚が良くないのは、これまで獲得した劣性遺伝子がホモになって発現し、

生存力の低下をもたらす場合が多いからである。

実験で、同じグループ内で育った顔なじみのメスと、

そうでない見慣れないメスのどちらを選ぶか比べたら、オスは見慣れないメスに近づき交尾した。

 

マガモの実験では、雛が一羽だけの場合は100%母親の色彩タイプを選ぶ。

雛が二羽以上では兄弟の色彩タイプを選んだ。

マガモのメスは、それまで同種のオスを見たことが無くても、正確に野生種のオスと番う。

 

 

刷り込みの成立

カモ類

音を出す+動く影

ガン類

動く影

 

托卵性

普通の鳥は親と同じ形状をした種が性行動の対象になる。

托卵性の鳥はこれがない。

仲間に戻るパスワードを持つ。

 

オーストリアのコンラート・ローレンツ博士

1973年、ハイイロガンから刷り込みの現象を発見してノーベル賞を受賞した。

 

 

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