卵
産卵中のメスは骨髄腔に骨髄骨として沈着させたカルシウムを卵殻形成に利用
卵 |
クチクラ |
卵殻の外側を0.01〜0.05mmの厚さで膜状に覆っている。 新鮮な卵はザラザラして、光沢がない。 洗卵などでクチクラが剥がれると光沢がでてくる。 |
卵殻 |
卵の全重量の11〜15%ほど。 ハチドリ4%、ダチョウ12% |
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卵全体を包む硬い殻、97%が炭酸カルシウム。 |
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表面には何千もの小さな穴(気孔)が開いていて、ガス交換が可能なので胚は呼吸ができる。 鶏卵では大きさ17μmが一万五千個 気孔の数は鈍端部に多く、鋭端部には少ない。 砂等を被せる爬虫類では、気孔の数が多い。 |
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卵殻の色は子宮部で写し絵のように付けられる。 樹洞などに産む卵は白色。 開けた場所の卵にはカモフラージュのため、色や模様がついている。 |
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産卵直後の卵はまだ殻が柔らかいが外気に接するとまもなく堅くなる。 |
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卵殻膜 |
厚さ0.07mm コラーゲンを含むタンパク質。 二層ある(外卵殻膜と内卵殻膜) 伸縮性がある。 厚さは鶏で6マイクロメートル、ダチョウ200マイクロメートル。 (コピー紙90マイクロメートル) 鈍端部では離れて空間ができる(気室) 衣服の原料にもなる。 膜をパウダー状にして生地の表面に固着させる。 吸湿性があり、手触りも良くなる。 |
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卵白 |
爬虫類の卵にはほとんど含まれていない。 |
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水分90% 蛋白質10% 実験で卵黄を減らしても影響は少なかったが、卵白を減らすと発育不全となる。(水分が重要) 胚を保護するショックアブソーバーの働き。 急激な温度変化を和らげる。 アルカリ性(pH9〜10) 抗微生物作用を持つ蛋白質が存在し、微生物の侵入を防ぐ。 |
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外水様卵白 23% 濃厚卵白
53% 内水様卵白 17% カラザ状卵白層 3% |
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消炎作用のある酵素リゾチームを含む。 風邪薬などの原料として鶏卵の卵白を使う。 |
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カラザ |
バネのような働きで、胚盤が上側になるよう保つ。 鋭端部は2本が左巻き、鈍端部は1本が右巻きにねじれる。 シアル酸という抗ガン物質が含まれている。 爬虫類にはないので、発生途中に卵が転がると死んでしまう。 |
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卵黄 |
水分52% 脂質29% 蛋白質19% 胚の発生に必要な栄養源 濃色卵黄と淡色卵黄が交互に同心円状になった複数の層からなる。 黄色はカロチノイド(キサントフィル)によるので、この色素が多いトウモロコシなどを摂取すれば黄色味が増す。 |
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胚盤 |
将来のヒナ |
割合 |
卵殻と卵殻膜 |
1 |
卵白 |
6 |
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卵黄 |
3 |
卵白は大きな鶏卵ほど大きいが、卵黄は18g前後とほぼ固定。
卵重に対する卵黄の割合 |
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早成性の鳥 |
晩成性の鳥 |
35% |
20% |
キーウィ61%、カモ類50%、チドリ目34%、ツル目32%、ウ類、カツオドリ15% |
ウミネコ |
卵白 |
64.8% |
卵黄 |
26.8% |
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卵殻 |
8.4% |
気室 |
鈍端部 鈍端部には気孔の数が多いので、鈍端部から空気が吸引され、 鈍端部に気室ができる。 気室の大きさは寒いと卵温が下がり早くでき、冬は大きくなる。 卵温と外気温が同じになると卵内容物の収縮が止まり、 気室の大きさは安定する。 その後は卵の水分が蒸発して気室が大きくなる。 卵が古いほど水分の蒸発で気室が大きくなる。(容積で15%) 孵化間際のヒナは鈍端部にある気室で呼吸する。 間違えて鋭端部に頭がいくと窒息死する。(死にごもり) 孵化時期が近づいて槳尿膜による呼吸から肺呼吸への切り替えのために、鈍端近くの卵殻膜内層に穴を開けて気室の空気を吸い込む。(卵内ピッピング) |
ゆで卵の鈍端がへこむのは気室内の空気が卵白を圧迫していたから。 |
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気孔の数 エミュー3万、鶏1万、ミソサザイ300 鋭端では少ない。 |
形 |
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球 |
長楕円形 |
長円形 |
洋梨型 |
カワセミ フクロウ ハチクイ |
アマツバメ ハチドリ ツバメ |
サギ ハト ヨタカ |
シギ チドリ ウミガラス |
転げ落ちる心配のない場所で産卵するものでは球形の卵が多い
キツツキは穴の中なのに卵型
座骨があまり湾曲していないカンムリカイツブリやコクガンは細長い卵を産み、 湾曲の度合いが進んでいるワシミミズクは丸い卵を産む。 |
洋梨型のシギチ、ウミガラスなどでは体のわりに大きな卵もうまく温められる。 |
輸卵管内(特に狭部)を卵が通過する際の、狭部管壁の圧力により卵形が決まる。 |
ウミネコの卵形 |
西洋梨形 |
68% |
樽形 |
24% |
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球状形 |
7% |
殻の厚み |
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薄い |
普通 |
厚い |
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ツカツクリ類 |
多くの鳥 |
カッコウ科 |
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鳥 |
殻の厚み( mm ) |
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ウズラ |
0.21 |
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コリンウズラ |
0.22 |
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鶏 |
0.37 |
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マガモ |
0.37 |
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ウミネコ |
0.4 |
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タンチョウ |
0.55 |
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ダチョウ |
2.5 |
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トロオドン科 (恐竜で最薄) |
0.8 |
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親が抱卵しないツカツクリ類では薄い卵でも、親につぶされる心配がない。
ハトなど孵化までの日数が短い鳥は殻が薄い。
托卵する鳥は、他の卵にぶつかっても割れないように厚い卵を産む。
鶏卵は平均3.4kgの圧力で割れる。 鋭端を加圧したときの破卵率が最も高い。 次が短軸中央部。 鈍端部を加圧したときの破卵率が最も低い。 |
鶏の卵の殻の厚み (mm) |
鋭端部 |
0.37 |
中央部 |
0.30 |
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鈍端部 |
0.27 |
春〜夏は殻が薄くなる。
(暑さで呼吸が多くなり、二酸化炭素を消費するから。)
乾燥や破損を防ぐ硬い殻は、雛が孵化する時の障害になる。 しかし胚は骨格形成のために卵殻のカルシウムを多量に利用する。 そのため、抱卵が進むにつれ殻の厚さも薄くなり、 ヒナは卵の殻を割りやすい。 |
シマフクロウの卵は一日に0.2g減る。
丸い卵 |
丸いほうが丈夫 |
効果的に暖められる |
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転卵しやすい |
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尖った卵 |
同じ面積の抱卵斑で、丸い卵よりも8%大きな卵を抱卵できる。 卵を大きくすれば発生の進んだ段階で雛を孵化させることができる。 |
抱卵の効率が良い。 抱卵しないときに、冷めるのが早い。 |
鶏の卵の重さ(g) |
産卵直後 |
60 |
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酸素 6ℓ |
+8.6 |
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水蒸気 11ℓ |
−8.8 |
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二酸化炭素 4.5ℓ |
−8.8 |
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最終卵重 |
51 |
雛 |
39 |
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殻、膜 |
12 |
卵が白い鳥 |
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元々卵は白色 捕食者から卵を守るよう、色を付け進化 (太陽光線から胚を守るという説も) (托卵から守るためという説も) |
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ほぼ球形 |
卵型 |
フクロウ |
カワガラス |
カワセミ |
コシアカツバメ |
アカショウビン |
カイツブリ |
ヤマセミ |
ヨシゴイ |
コゲラ |
キジバト |
アカゲラ |
カラスバト |
アオゲラ |
イワツバメ |
クマゲラ |
ミソサザイ |
アマツバメ |
エゾムシクイ |
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センダイムシクイ |
ダチョウの白い卵の茶色に塗ったら、3.6度高くなり、内部は43.4度。
(胚が生存できる限界温度は42.2度)
樹洞など暗い場所で産卵する鳥は卵が白いものが多い。 |
ツバメの卵には柄があるが、 トックリ型の巣の奥に産卵するコシアカツバメでは白色 |
ハトの卵は白いが、ハトは第一卵からすぐ抱卵。 雌雄交代で抱卵し、巣を空けることはない。 |
ガンカモ類は巣を離れるとき巣に覆いをする。 |
カイツブリの巣は皿型だが、親は巣を離れるときに葉を乗せて隠す。 何日かすると汚れて目立たなくなる。 (全卵産み終わるまでしないので、カモフラージュより保温のため?) |
ヨタカの卵は、模様があるが、薄く、抱卵していないと目立つ。 日中は、ほとんど抱卵している。 |
卵殻の色 |
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褐色、オリーブ色 |
青色、緑色 |
ポルフィリン |
シアニン |
血液を赤くしているヘモグロビン由来 |
ヘモグロビンが分解された胆汁色素由来 |
真っ赤や黄色の卵は無い |
青色の卵殻 |
上部が覆われていない椀型の巣を作る鳥に多い。 青い光が胚の発達を促進する効果が最も高い。 抱卵期間を最短にして捕食の危険性を最小限に抑える。 |
模様 |
卵の色や模様は、殻が作られる場所でもある卵管子宮内から分泌される色によって付けられる。 ここから分泌される色素は七種類あり、その組み合わせで、さまざまな色の模様が付けられる。 分解された廃赤血球などほとんどが体内老廃物。 |
褐色の斑 |
プロトポルフイリンは卵殻を強くする。 カルシウムの少ない地域で生まれた卵は、濃い色の斑がある薄い卵殻を持つ。 |
斑紋 |
斑点 |
卵が静止した状態で着色 |
条線 |
卵が回転しながら着色 |
大きさ |
若い雌は小さな卵を産む傾向がある。 一腹卵では最後に小さな卵を産むことが多い。 |
父親だけが子育てする種は、卵の総体積が最大。 (子育てしなければ、♀はエネルギーを卵につぎ込めるから) |
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鳥類の骨盤は哺乳類と異なり、完全に閉じて環状になっていないので、相対的に大きな卵を産むことができる。 |
ウミガラス |
卵は白、水色、青緑、赤褐色などの地にさまざまな模様。 同じ個体は同じ模様の卵を産む。 集団で繁殖するので、自分の卵を容易に識別できる。 |
ウミネコ |
第一卵より第二卵の方が気孔密度、総気孔数とも多い。 |
第一卵が一番大きく、産卵順に伴い小さくなる。 |
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繁殖期前半では同時孵化、後半は非同時孵化。 |
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ダチョウ |
卵を固ゆでにするには2時間かかる |
ヤブサメ |
孵化後の卵の卵殻、オスは食べないがメスは食べる。 カルシウムの補給のため。 |
カルシウム |
鶏の体では25gのCaを保有する。 60gの卵を産卵するたびに、 体のCa保有量の8%に相当する2.3gのCaを排出する。 |
タンパク質 |
鶏の卵には7.5g含有 |
胚 |
ムクドリの胚は、抱卵後5〜6日で0.2g 孵化直前の10日目で4.9g 胚が正常に成長するのは34〜38度 |
孵化 |
カモ類やウズラは一巣の卵が孵化するのに1〜2時間。 人工孵化器で暖めた場合、全部孵化するのに1〜2日。 卵内の雛同士コミュニケーションをはかっている。 |
穴あけ |
ピッピングともいう。 気室域内の卵の中心側に開ける。 穴から出発して反時計回りに進む。 孵出までの時間はライチョウで8時間。 |
無精卵 |
単為発生(処女生殖)による。 ミツバチ、ミジンコ、 シチメンチョウ、鶏、ハトで自然単為発生の例が有る。 鶏では無性卵でも約15%が分割を開始する。 しかしやがて停止し、死んでしまう。 稀に発生が進み、正常な♂となる例が報告されている。 処女生殖ではzzかwwの胚となるが、 wwの胚は生存できないのでzzである♂のみとなる。 哺乳類では初期の段階で発生が停止、個体にならない。 |
骨盤 |
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鳥の骨盤は腸骨、挫骨、恥骨が一体になっている |
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骨盤が狭い鳥 |
骨盤が広い鳥 |
細い卵を産む |
丸い卵を産む |
カンムリカイツブリ コクガン |
ノスリ ワシミミズク |
骨盤が下に強く湾曲した種ほど、球形に近い卵を産む |
精子貯留腺 |
卵管にあり、精子はこの中で長期間生き続ける。 したがって、一回の交尾で受精卵が長期間産出できる。 鶏では35日までの例がある。 受精率が高いのは1〜2週間。 |
カルシウム源 |
ネズミ類、貝類、等脚類(ワラジムシ目)、多足類 |
イスカがコヨーテの糞から齧歯類の骨のかけらを食べた例も。 |
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カタツムリの減少で卵の殻が薄くなり、繁殖成績の悪化も。 |